リノベーションの種類とメリット | 建築家とリノベーション

1. リノベーションとリフォームの違い

お客さんの住まいに関する様々なご相談を受ける機会があります。その中で、よく混同されるリフォームとリノベーションの違いについて、今回は詳しくご説明いたします。リフォームとリノベーションは、どちらも既存の建物を改修するという点では共通していますが、それぞれの特徴や目的は異なります。細かな違いを見極めることで、より理想の空間を実現するためのヒントが見えてくるかもしれません。

リフォーム – 住まいの機能や美観、効率を向上させる

まず、リフォームについてご説明いたします。リフォーム (Reform)は、形 (Form)を再編 (Re)するという意味の英単語であり、既存の建物や部屋の一部を修繕・改修することを指します。
具体的には、水回りの設備の交換や内装の一部の変更、間取りの改善などが一般的で、老朽化や劣化が進んだ建物や、現代のライフスタイルに合わなくなった間取りの改善などにも利用されます。
リフォームの目的は、住まいの快適性や美観、使い勝手を向上させることにあります。

リノベーション – 既存の建物を新たな用途に適した空間に変える

一方、リノベーション (Renovation)は、革新・刷新 (Inovation)という言葉がついていることからも解るように、表面上のデザインや、機能だけの問題だけでなく、既存の建物を新たな用途に適した空間に変えることを意味しています。
例えば、古い倉庫を住宅に転用したり、オフィスをカフェにリノベーションしたり、世の中のニーズが変わり役割を終えた建物を、再生や再利用によって新たな価値を生み出すことにあります。

2. リノベーションのメリット・デメリット

リノベーション住宅は戸建住宅のリノベーション物件と、マンションなど集合住宅のリノベーション物件に大きく分けられます。
さらに、自分で中古住宅を購入してからリノベーションを行う場合と、あらかじめリノベーション工事が済んだ物件を購入する場合とがあります。

特に自分で中古住宅を購入してからリノベーションを行う場合、以下の様なメリット、デメリットが挙げられます。

メリット
  • 自分の住み方に合わせて、自由に内装を設計できる
  • 新築に比べて費用を抑えられる
  • 都心部など人気が集中するエリアでも、中古物件なら残っている可能性が高い
  • 資産価値の面で見ると、購入時よりも物件の価値を上げることができる
デメリット
  • 住むまでに時間を要する
  • 耐震性能などの検査が必要な場合がある(戸建住宅の場合)
  • 一般の住宅ローンでは、借入額に制限がかかる場合があるなどが挙げられる。

3. リノベーションの種類

リノベーションには、大きく分けて以下の3つの種類があります。

  • 部分リノベーション:建物の一部分だけを改修や改造することです。 例えば、キッチンやバスルームなどの水回りや、床や壁などの内装を変えることなどが該当します。 部分リノベーションのメリットは、費用が安く済むことや工期が短いことです。 デメリットは、全体的なデザインや機能に統一感がなくなることや、築年数が古い建物では劣化した部分が残ることです。
  • 全面リノベーション:建物全体を改修や改造することです。 例えば、間取りや構造を変えたり、断熱材や設備を入れ替えたりすることなどが該当します。 全面リノベーションのメリットは、自由度が高く理想の空間を作れることや、耐震性や省エネ性などの性能を向上させられることです。 デメリットは、費用が高くかかることや工期が長くなることです。
  • コンバージョン:建物の用途を変えることです。 例えば、事務所や店舗などの商業施設を住宅にしたり、逆に住宅を商業施設にしたりすることなどが該当します。 コンバージョンのメリットは、既存の建物に新たな価値を創出できることや、環境負荷を低減できることです。 デメリットは、法令や規制に適合させるために手間やコストがかかることや、建物の特性に合わない場合に快適性が損なわれることです。

4. 日本と欧米のリノベーションにおける状況の違い

日本と欧州では、これらの種類に対するニーズや動向が異なっています。主な違いは以下のとおりです。

  • 日本:日本では新築志向が強く、住宅の平均使用年数は約30年です。そのため中古住宅市場はまだあまり発達していません。
    リノベーションは主に自己居住用途で行われることが多く、部分リノベーションが主流です。フル・リノベーションは費用対効果が低いと考えられることが多く、あまり行われません。しかし近年では、人口減少や空き家問題などの影響で、中古住宅の価格が安くなり、自分好みにリノベーションすることができるメリットが認識され始めています。また、環境性能の向上や歴史的な建物の保存などの社会的な要請も高まっています。そのため、リノベーション市場は拡大傾向にあります。
  • 欧州:欧州ではストック型社会が根付いており、住宅の平均使用年数は100年以上です。中古住宅市場が活発で中古住宅にも適正な価格が付き、リノベーションで資産価値を高めることができます。そのため、リノベーションは自己居住用途だけでなく、投資用途や賃貸用途でも行われることが多く、フル・リノベーションも珍しくありません。フル・リノベーションは中古住宅の資産価値を高める効果があり、市場での需要が高いです。また、欧州では歴史的な建物が多く、その保存や活用に対する関心が高いです。そのため、リノベーションは建物の特徴や文化を尊重しながら、現代的な機能やデザインを取り入れることが求められます。

日本も建築の耐久性の向上により平均使用年数も年々伸びていく傾向にあります。欧米型のストック型社会に移行にするに連れて、リノベーションにより建築の価値を高め、建物を長く使って行く方向に進むと考えられます。

5. 国も法改正による後押しをする、価値を再編するリノベーション

日本では新築至上主義や少子高齢化などの社会的な要因によって、空き家の数や空き家率が年々増加しています。
リノベーションは、単に古いものを新しくするだけではなく、その建物が持つ意味や可能性を探求することだと言えます。リノベーションによって、建物は今の住まい手の愛着が増し、次世代へと住み継がれていく価値のあるものになると期待されます。

住宅としてのニーズがなくなった建物でも、店舗やオフィスなどに用途を変更することで新たに再生できる可能性もあります。
2019年(令和元年)の建築基準法の改正により、用途変更で確認申請が必要な規模が100m2超から200m2超となりました。
この法改正によって、200㎡以下の小規模な建物であれば物販店舗や保育施設といった用途変更が確認申請不要で行えるようになりました。
この法改正の背景には既存ストックとなっている建物を活用する目的があります。国土交通省の調査によれば、9割以上の戸建て住宅が200m2未満となっており、この法改正によって多くの戸建て住宅が確認申請不要で用途変更できるようになります。

6. リノベーションまちづくり – エリアリノベーション

リノベーションまちづくり(エリアリノベーション)とは、リノベーションが同時多発的に起こることです。アクティブな点が互いに影響し合い、増幅しながらつながることで、点と点だったリノベーション が面のリノベーションとなりエリア全体に都市開発の波が広がります。

エリアの特徴を丁寧に紐解き、共感者と共に実験的に小さな取り組みを繰り返し、少しずつエリアに変化を起こすことでその価値を向上させる新しいまちづくりの手法です。
エリアリノベーションは、低利用の公共空間や空き家・空き地などを活用し、チャレンジできる場づくりやリノベーションにより、まちの魅力を積み上げ、エリアの価値やイメージを向上させるエリア形成をします。

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