BIMの役割と将来性 | 設計事務所がBIMを使いこなす為の4つのフェーズ

BIMは、「Building Information Modeling」の略で、「建物を情報で構成する」と訳されます。建築物をコンピューター上の3D空間で構築し、企画・設計・施工・維持管理に関する情報を一元化して運用する手法のことです。

少しわかりやすく説明すると、建物を3Dモデルでコンピューター上で作り、その3Dモデルをある高さで水平に切ったり、ある方向で垂直に切ったりすることで図面を作成します。
またその3Dモデルの中には、素材や数量、重さ、価格なども入れることができるので、それらの情報の整理の仕方によって、詳細な検討や構造計算、コスト計算まですることができます。

設計から施工、維持管理といった建築生産プロセスだけではなく、経営判断や公共サービスを含めて社会に不可欠なツールとなる可能性があり、建築の質を高め、ビジネスを効率化する重要な存在となりつつあります。

BIMを使った建築設計 | 建物の完成を3Dでイメージしながら作るBIM設計では、BIMの3Dモデルを使ったビジュアライゼーションツールとしての側面を主に書きました。
こちらの記事では、もう少し包括的に、BIM全体としてどういったことができるのかということを書いていきたいと思います。

手書きからCAD、CADからBIMへ

1980年代からPCの普及により、それまで図面を手書きで書いていたものをCADを導入し設計製図の2DCAD化が普及していく大きな転換点でした。
CADは「Computer Aided Design」の略で「コンピュータ支援設計」とも訳されます。
それまで手で線を1本づつ書いて作成していた図面をコンピューター上で書くことで、コピーしたり修正したりすることが手で書くよりも効率的になりました。

しかしながら、CAD自体は線を一本づつ書いていくことには変わりはなく、例えば、柱や壁、家具などの線も全て一本の線で書かれています。
一方、2000年代にアメリカBIMという概念が初めて出され、2009年に初めて日本にも輸入された「日本のBIM元年」の年になりました。
2014年に国土交通省が正式にBIMに関するガイドラインを公表し、国を挙げての本格的な運用が始まります。

BIMでは2Dではなく3Dモデルを作成しながら設計を行います。
BIMは手書きからCADへと変化してきたものと同様の大きな変化で建築・建設業界にとって大きな転換点と言えます。

Building ModelingとInformation Modeling

東京大学生産技術研究所特任研究員の村井一氏は、BIMの概念を捉えやすくするため、

BM:Building Modeling
BI:Building Information
IM:Information Modeling

という3つの概念に分類し、BIMの活用を定義しています。

作成:村井一(東京大学生産技術研究所 特任研究員)

BMは形状情報であり、建築物や構成要素を仮想空間に構築する行為。
BIは建築物の構成要素に紐づく性能、仕様、寸法などの属性情報。
IMは入力した情報や参照する情報の紐づけなどやルールを設定する行為だと整理しています。

村井氏の定義で説明すると、BMで計画のイメージの共有を容易にし、IMによって図面間の整合性を担保し、データ連携も可能となります。BIM活用を「BIMを使う」という一言に留まるだけではなく、「何にBIMを使うか」「どうBIMを使うか」をプロジェクトの特性に応じて考え、BIMの意味する所を整理することが重要です。

1. ビジュアライゼーション(可視化)ツールとして

まず、私自身がBIMを使う一番の大きな利点だと考えるのが、すぐに3Dで可視化できるということです。設計者は2次元(平面)の図面情報から3次元(立体)に頭の中で組み立てる能力が必要と言われます。

しかしながらクライアントなど専門家ではない人にとって、図面だけを見てどういった空間なのか全て把握するのは難しいでしょう。
実際に、工事が進み、建物が完成するまでどういったものができるか解らなかったいう意見をよく聞きます。

そこで設計段階からBIMで作った3Dを見ながら打ち合わせをすると、理解が深まり、完成後のイメージができます。これまでも3Dのパースを設計事務所や住宅メーカーに作成してもらうというケースはありました。しかし、パースはあくまでイメージとして脚色されたものも多く、現実の出来映えとは異なることもあります。
また、3DCADを使いパースなどを作成することはできますが、図面と連動しているわけではありません。

BIMではそれらが連動しているので、どちらかを変更すればデータが連動して修正されます。
近年ではBIMモデルを使い動画やVRの作成も容易にできます。

これらを使うと体の動きとともにイメージも連動して動きますので、視点によっての細かな見え方の把握が容易にでき、竣工後のイメージとほぼ変わらないものが体感できると思います。
(補足ですが、設計側でVRを作るレベルのデータの作り込みをするのは結構手間はかかりますので、費用は別途かかると思っておいた方が良いです)

2. 設計をまとめるプラットフォームとして

設計には大きく意匠、構造、設備という3つの分野に分かれています。住宅規模だと意匠設計者が全てを担当することもありますが、規模の大きいプロジェクトでは意匠、構造、設備のそれぞれに設計者が数名つきます。

規模の大きなプロジェクトでの問題は、プロジェクトに関わる関係者の数が多く、またプロジェクトの期間も長くなるので、情報伝達がうまくできないことや、内容については個々人の記憶に頼っている部分も多いです。

業務のほとんどが情報の伝達にあると言っても過言ではありません。情報量が莫大に多いため、正確に情報伝達が行われないと、それぞれの図面が食い違い、いざ現場で作ると言うときに問題になることが多々あります。そこで、BIMを使うことにより意匠、構造、設備の情報を全て一つのBIMモデルの中に入れてしまい、同じモデルで設計を進めることで情報の食い違いがなくなり、スムーズに設計を行えるようになります。

また、BIMで作られた3Dモデルには数量情報が入っています。例えば壁にコンクリートが何㎥で構成されるといった情報が入っているので、そこに単価を入れてあげれば自動的に積算ができます。

3.BIMを使った製造・生産プロセスへの活用

次に製造、施工段階のBIM利用についてです。通常、製造、施工の段階ではそのための図面を作ります。施工図施工の段階に入ってもそのBIMモデルを使いを描くことで、ミスなく製造、施工まで行うことができます。特にCNC(機械加工)によるものだと、3Dデータを入力することで、人の手より早く、かつミスなく作ることができるので、データの有効活用ができます。杉のCLT家具では、CNCを使った家具製作を行なっています。3DデータをCNCに流し込むことで自動で材料加工を行なってくれるので、人件費が抑えられ、安価に家具を供給することができます。

杉のCLT材で作る家具. CNCにより, 家具の3Dデータから自動で材料加工を行なってくれる. 人件費が抑えられ、工具を持たない設計事務所でも安価に家具を供給することができる.


4.建物の運営・管理

建物の運営、管理の面でもBIMの利用は可能です。例えば、BIMモデルを使って日射や冷暖房のシュミレーションを行い、年間にどれくらいの光熱費がかかるかを計算することもできます。下の動画は日中、8時から17時までにどのような日の入り方をするか検証をしたものです。

どの時間にどの方向から日が入るかを理解することができ、そこから窓の位置を決めるなど設計側にフィードバックをすることもできます。また、完成後に水漏れなど何か不具合が出た時に、建物実物とBIMモデルを照らし合わせて検証を行うこともできます。
建築の維持管理段階でもBIMデータが活用されることにより、建築のコストダウンや長寿命化、環境面での成果につながります。

今後の展望

色々とBIMでできること、可能性について書いてきましたが、正直なところ運用の部分では現状では色々と問題があります。

私もこれまで様々な規模のプロジェクトにBIMを使って関わってきましたが、一般的にはまだ1.の可視化ツールとしての利用以外はまだ本格的には利用できていないと言うのが現状です。

理由は単純で、扱える技術者が圧倒的に不足しており、設計側がBIMで図面を書いても施工側が対応できない、また反対もあったりします。関連業者全てがBIMで業務を行えないと、一気通貫でBIMデータの理由ができず、BIMを使うメリットが小さくなってしまうからです。

しかしながら、私がスイスにいた2019年でも、クライアントからBIMでの3次元モデルでの納品を求められ、急速で対応をしていきました。

日本でも令和5年度までに全ての公共工事におけるBIMを原則適用という通達を出していますが、現段階では、事業者側へもBIMの認知はそれほど高くないのが現状です。

しかしながら、BIMで設計を行うことが建築の質を高め、ビジネスを効率化できることが理解されれば、自ずと発注側からBIMで設計をしてくれという要求も出てくるように思います。
そうした時には、なかなかBIM化が進まないといった状況も一気に変わる可能性があり、そのために今から準びを着々と進めておく必要があります。

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