住宅や店舗、企業が建てる自社の建物など、建築を建てることは非常に大きな出費が伴い、当然ながら重大な決断が必要となります。
しかしながら、ほとんどの人にとって建築を建てること自体初めての経験であることが大半であり、解らないことばかりで不安を抱く方も多いと思います。
中でも、図面を見ただけではイメージが解らず、完成するまでどのような建物が建つのかわからなかった、もしくは建ってみたら思っていたイメージと違い後悔したということを度々聞きます。
そこで、それらの問題を解決することができる、BIMについて説明したいと思います。
BIMは「Building Information Modeling」の略で、簡単に説明すると、これまで2次元(2D)で図面を書くことで設計を行っていた工程を、全て3次元(3D)でモデルを作りながら設計を行うことを言います。
建築の分野では、これまで建築を実際に作ると言う点においては多くの発展をしてきました。
しかしながら建築を作るプロセス、特にコミュニケーションの部分においては、まだまだ発展途上で、多くの課題があると思っています。
BIMという技術は設計のプロセスを革新するもので、コミュニケーションの部分の課題を解消できる大きな可能性を持っています。建築、建設の分野で大きな新しい流れになりつつあるBIMについて、私個人の経験も踏まえ説明をしていきたいと思います。
この記事では、BIMのコミュニケーションツールとしての利点について書いていますが、その他の点については、
「BIMの役割と将来性 | 建築設計事務所がBIMを使いこなす為の4つのフェーズ」で詳しく書いています。よろしければ併せて読んでみてください。

1. 3Dで建物の完成イメージを共有しながら作るBIM設計
建物を建てるお施主さんは、多くの場合、建築の専門家ではありません。
初めて図面を見るという方も多く、図面だけではどのような建物になるかなど、全ての情報を把握するのは難しいでしょう。
専門家でない人にとっては、複雑で大きな建築のプロジェクトを完全に理解することは難しく、工事が進み建物が完成するまでどのような建物ができるか解らないず不安だったいう意見をよく聞きました。
実は専門家同士で打ち合わせをする場合も、図面のみでコミュニケーションをしていると相互で認識の齟齬が起こることがあります。
平面図、立面図、断面図と言う3つの図面を用いることが多いですが、頭の中でそれぞれ完成イメージを想像しながら打ち合わせをするので、きちんと全ての図面情報を読み込んでいないと専門家でも勘違いを起こしてしまうのです。
このような問題点を解消できるツールがBIMになります。BIMを使うと3Dを見ながら設計を行うので、相互間の認識のズレはなくなりますし、またその3Dがそのまま図面になるので、図面の間違いも減らすことができます。

2. 2Dで設計をするCADから3Dで設計をするBIMへ
BIMは3Dで設計を行うツールという説明をしましたが、3Dを使うというのはBIM登場以前からありました。パースを作成するような3Dモデリングソフトです。BIMができる前はこの3Dモデリングソフトを使いパースを作成していました。
この場合は、まず2次元で図面(平面図や断面図)を書いて、形が決まった時点で3Dソフトでモデルを作り、その後に3Dで検証をするという流れになります。
しかし3D上で問題を発見した場合には、3Dモデルを修正し、その後に図面も修正すると言う手順を踏まなければならず2度手間になり、かつミスの原因にもなります。
3. 3Dで設計をすることで問題点や要望が明確になる
私が3Dで設計をすることの利点に気付いたのは、ドイツの設計事務所で働いている時でした。
その事務所はドイツ国内だけでなく、世界中で大型プロジェクトがいくつも進行している事務所でした。
設計している建物のデザインのクオリティも非常に高く、形状が複雑な建物もありました。
その事務所の設計方法が興味深く、当時はまだ現在ほどBIMが浸透してませんでしたが、基本設計段階ではあまり図面を書くことが重要視されず、すべて3Dモデルを作成し、その3Dモデルをもとに事務所内でコミュニケーションが行われ、設計が進められていました。
ディレクターと呼ばれる、日本で言う部長クラスの人も直接3Dモデルを触り、クルクルとモデルを回しながらその案の可能性について議論していくのです。
そうすることで図面を一度頭の中で3Dにして想像するという手間がなくなり、問題が明確化され、共有されます。
この体験は私にとって衝撃的で、図面で決めたものを3Dにして検証するのではなく、3Dモデルで決めたものを図面化するという、
それまで私が日本で行っていた設計方法とは全く反対のものでした。
4. 家づくりの不安や後悔を軽減するBIM
BIM設計は、単に3Dモデルを作成することだけでなく、BIMモデル内で材料や詳細なども3D内で決めていきます。
建物を作る為の情報が、全てBIMモデルの中に全て入っているので、ものすごい量の情報量になります。
それらの情報を整理して図面となります。
3Dモデルがそのまま図面になるので、図面の不整合やミスは少なくなります。
お施主さんにとっては途中経過の検討段階でも、常に3Dで完成イメージを確認しながら進められるので安心です。
また最近ではVRなども簡単に作ることができ、お施主さん自身で3Dデータを動かしながら建物内を見れるツールなども充実してきているので、より建物の完成イメージを3DもしくはVR上で体験することができ、モデルルームに近い体験ができます。
ぜひ、3Dで設計を行うBIMを体験してみてください。
下記からコメント、問い合わせいただいたければ、当方で作成をしたBIMデータをお送りすることができます。
(※現状、Windowsのみでしか開くことができません)
ビューアーになっていますので、簡単な操作でご自身で建物内を歩くことができ、体感して頂くことができると思います。