1. まちの雰囲気によって住みたいかどうかが決まる
自分が住むまちを決めるときには、できれば魅力的で雰囲気が良い街に住みたいと思う方が多いと思います。まちの雰囲気として表現される意見として、例えばポジティブな意見では、「洗練された」「調和が取れて美しい」「歴史を感じる」「自然が多い」、ネガティブな意見では「ゴミゴミとしている」「古い」「寂しい」などと表現されることがあります。
そのような印象は、まちのどのような部分でそう決まっているのでしょうか。もちろん地域によって理由は様々だと思いますが、ここではまちの雰囲気という少しフワッとしたものに対して、専門的な知識から代表的な幾つかの要素を紹介したいと思います。
2. 今後まちが発展するかどうかが決まる「市街化区域」と「市街化調整区域」
少し専門的な話になりますが、それぞれの地域は都道府県や市町村によって、都市計画法という法律で「市街化区域」「市街化調整区域」などに分かれています。
市街化区域は既に市街地を形成している地域、または10年以内に市街化を図るべき区域です。市街化調整区域は市街化を抑制すべき地域です。
つまりは今後発展させたい地域と、発展させたくない地域とで分かれているということになります。発展させたくない地域 (市街化調整区域)では、法律上、建てられる建物の規模や用途なども制約されるので、今後、発展はしない可能性の高い地域となります。
まずはこの「市街化区域」か「市街化調整区域」かという違いが、まちの発展に大きく影響を与えると言えます。
3. 建物の用途を制限する用途地域
もう一つまちの雰囲気を決める重要なものがあります。用途地域です。日常生活ではあまり目にすることは少ない言葉かも知れませんが、不動産を購入するときや、建物を建てるときに出てくる言葉です。
用途地域は大きく住居系、商業系、工業系に分けられ更に細かく計13種類に分類しています。
この13種類により、建物を建てられる高さや、建てられる用途などの規制がかかってきます。下の表で左に用途地域、右にその場所に多く建っている建物のイメージを記載してみました。一番上が住居系で一番規制が厳しく、下に行けばいくほど制限は緩くなっていきます。
1. 第一種低層住居専用地域
2. 第二種低層住居専用地域
3. 第一種中高層住居専用地域
4. 第二種中高層住居専用地域
5. 第一種住居地域
6. 第二種住居地域
7. 準住居地域
8. 田園住居地域
9. 近隣商業地域
10. 商業地域
11. 準工業地域
12. 工業地域
13. 工業専用地域
2階建て住宅
2階建て住宅 + 店舗 (150m2以下)
4階建て
4階建て+スーパー
低層+中高層
低層+中高層+パチンコ
国道沿い+中高層+パチンコ
2階建て+コンビニ+畑
商店街
駅前デパート
・住宅しか建っていない地域は低層住居専用地域
・4階建のマンションやビルなどが建っている地域は中高層住居専用地域
・低層中高層が入り乱れて建っている地域は住居地域
・お店などが多い地域は(近隣)商業地域
と整理するとわかりやすいかもしれません。
第一種、第二種というものがありますが、第一種の方が制限がより厳しい地域になります。
なぜ用途地域を定めてあるかというと、用途の混在を防ぐためです。
住居系、商業系、工業系を分けて良好な都市環境を造っていくことを目的にしています。
住宅街、オフィス街、商店街などあるのはこの用途地域が強く関係しています。
また、将来、大型の再開発が行われる可能性がある低層で土地が細分化されているような密集した市街地において、小さな土地をひとつにして一体的な再開発を行ない、高層ビルなどの高い建物を建てられるようにした高度利用地区というものがあります。
ここでの高度とは、小さな建物ではなく、より大きな建物を建ててに高度に土地を利用するという意味になります。
木造の一軒家やアパートばかりだった場所が、マンションやオフィスが急に立ち出した場所はこの高度利用地区の可能性が高いです。大きな特徴として高度利用地区に指定されると、建築面積の最低限度を制限されるため、小さな土地での建築ができず、結果として土地をくっつけて高度利用による再開発を促進します。
4. まちの雰囲気に大きな影響を与える高さ10mのデザイン
これまで見てきたの3つは点は、都市計画や建築の法律に関わる部分になります。法律はまちのイメージや、雰囲気を決める非常に重要な要素ですが、それはその場所に建つ建物の高さに影響を与えるからです。
一般的に高さ10mまでの道や建物との関係が重要と考えられています。大体、3階建て程度の高さですね。街を歩いていても、3階以上の階はあまり気にはならないと思います。このことを重要視した事例としては有名なものは、代官山のヒルサイドテラスです。
建物を10m以下の高さに抑えた多様な建築群で構成され、歩行者にとっても心地よい空間となっており、そのことがこの場所の雰囲気を決めている大きな要素であると思います。
5. 歩いて楽しめるまちへ
前の項にも関連することですが、街の魅力を決めるものとして、歩行者が楽しめるような空間になっているかが非常に重要です。
日本の郊外の都市では車を中心にした設計されていることが多く、必ずしも歩行者が楽しめる空間にはなっていません。
一方、ヨーロッパの小さな都市の中心部の多くは、歩車分離され歩行者が安全にいてショッピングなどを楽しめるようになっています。
車社会の地方都市であっても、中心部などは歩いて楽しめる公共空間として整備されることで、まちに賑わいを取り戻し、魅力的な街となることに寄与すると考えます。
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