古民家再生・リノベーションの方法


古民家再生の魅力と重要性

古民家を改修して住みたいと望む人はたくさんいます。
日本人の日常生活が自然と共にあった頃から丁寧に作られた昔の家は、生活の豊かさや、職人の手の痕跡、また日本の歴史や文化が刻まれています。民家は自然と共生し、日本の気候風土に根差した美しい家でした。

一方で耐震性への懸念や、断熱の問題など、現代の生活をそのまま古民家でしようとすると、越えなければならないハードルがいくつもあると思います。
ここでは、日本の伝統的な建築様式を保存しつつ、現代のライフスタイルに適応させることができる古民家再生についてのメリットと方法、事例などを元に説明していきます。

1. 古民家の定義

古民家とは、全国古民家再生協会では、1950年制定の建築基準法以前に伝統工法で建てられていた住宅を古民家と定義しています。
これらの建物は、伝統的な建築工法で建てられており、釘を使わずに木材を組み合わせる技法で建てられたものが多いです。
また木材や瓦、土壁など、自然素材を多用し、広々とした間取りや縁側、土間など、現代の住宅にはない特徴があります。地域によって独特の作り方をしていることも特徴で、地域の歴史や文化、気候風土を強く反映した建物と言えると思います。

建築基準法では、戦後復興から高度成長期の住宅需要に合わせ、それまでの木造工法を「在来工法」、建築基準法制定以前からあった工法を「伝統工法」と呼びます。その後在来工法は、大地震や技術の進歩などにより改良されてきました。
柱と梁で建物を支える構造が特徴で、筋交いや付属金物、構造用合板で壁量を確保して構造耐力を確保します。西洋建築の思想を取り入れた工法で、施工が簡単で大量生産に適しています。

2. 古民家の魅力

古民家にはさまざまな魅力がありますが、その中でも注目すべき3つの点について、記載します。

・広い空間と多用途な利用

古民家は、大きな梁と柱: 古民家は太い梁と柱で支えられており、広い空間を確保することができます。
また天井を低く張られた天井を取る事で、天井が高く、開放感のある空間が生まれます。
また玄関から続く大きな土間スペースは広いスペースはリビングやキッチン、仕事や趣味のスペースとして多用途に利用できます。

既存の丸太の大きな梁は,現在の住宅では使わない,ある意味貴重な素材である.(改修前)
既存の梁がインテリアのアクセントとなるよう計画した(改修後)

・自然素材

古民家では、木材、土壁、漆喰、和紙、土間(土)、瓦など、自然素材の特性を多く使割れています。
例えば、漆喰は壁や天井に使われ、調湿効果や防火性能があります。自然素材であるため、健康にも良いとされています。
土壁は湿度調整に優れ、夏は涼しく冬は暖かい環境を作り出し、焼杉は外壁材として使われ、耐久性が高く、防虫・防腐効果があります。特性を多く使われて、快適で健康的な住環境を提供します。

瓦を剥がし,下地の野地板を補修した後に防水シート張りを行なった.
瓦の耐久性は100年以上とも言われる. 剥がした瓦は一時的に保管され, 再利用した.

・コミュニティとのつながり

古民家再生は、地域コミュニティとのつながりを深める機会にもなります。地域の歴史や文化を尊重しながら生活することで、地元の人々との交流が生まれます。また、地域イベントやコミュニティ活動に参加することで、豊かな人間関係を築くことができます。

築70年程の地域の人々に長年愛され生活を支えてきた精米所 (改修前)
リノベーションの魅力や可能性を伝えるために改修された, 古民家リノベーションのモデルハウス (改修後)

3. 古民家再生のプロセス調査と計画

古民家再生の第一歩は、現状の調査です。建物の構造、耐震性、設備の状態を詳しく調査し、再生計画を立てます。この段階では、予算やスケジュール、デザインコンセプトを明確にすることが重要です。

設計とデザイン

設計段階では、伝統的な要素を活かしつつ、現代的な快適さを取り入れる方法を考えます。例えば、自然素材を使用した内装や、エコフレンドリーな設備の導入などが考えられます。また、風通しや採光を考慮した設計も重要です。

構造補強

古民家再生における耐震補強は、建物の安全性を確保するために非常に重要です。
以下に、古民家の耐震補強の方法とポイントを詳しく説明します。

  • 耐震診断 : まず、古民家の耐震性を評価するために耐震診断を行います。これは、建物の基礎、柱、壁、屋根などの構造部分を詳細に調査し、地震に対する強度を評価するプロセスです。耐震診断の結果に基づいて、具体的な補強計画を立てます。
  • 基礎の補強 : 古民家の基礎は、石の上に建てられていることが多く、現代の建築基準に適合していない場合があります。このため、基礎をコンクリートで補強することが一般的です。ジャッキアップや曳家(ひきや)といった技術を用いて、建物を一時的に持ち上げて基礎を強化する方法もあります。
  • 耐力壁の設置 : 耐力壁を増設することで、建物全体の耐震性を向上させます。耐力壁は、地震の揺れに対して建物を支える役割を果たします。古民家の伝統的な構造を損なわないように、適切な位置に耐力壁を設置することが重要です。
  • 制震ダンパーの導入 : 制震ダンパーは、地震の揺れを吸収し、建物の揺れを抑える装置です。古民家の柔軟な構造に適しており、耐震補強と組み合わせて使用することで、建物の耐震性をさらに向上させることができます。制震ダンパーを導入することで、古民家の開放的な空間を保ちながら耐震性を高めることが可能です。
  • 屋根の軽量化 : 古民家の瓦屋根は重く、地震時に建物に大きな負荷をかけることがあります。瓦屋根をスレートや金属製の軽量な屋根材に変更することで、建物全体の耐震性を向上させることができます。
  • 木材の補強 : 古民家の柱や梁は、長年の使用で劣化していることがあります。これらの木材を補強するために、金属プレートやボルトを使用して接合部を強化します。また、必要に応じて新しい木材を追加することもあります。
新たに基礎を打ち、土台を固定させ耐震性能を向上させた
既存の構造の内側に、新しく構造を加え補強を行なった


3. 成功事例の紹介

実際の古民家再生プロジェクトの事例

成功事例として、実際の古民家再生プロジェクトを紹介します。例えば、築100年以上の古民家を再生し、現代的な快適さを取り入れた事例などがあります。ビフォーアフターの写真や施主の声を交えることで、読者に具体的なイメージを持ってもらうことができます。

築70年ほどの民家を、アトリエ+住居に改修した事例, 天井の高い平屋で, おおらかな暮らしができる住まいとなった.
精米所をリノベーションのモデルルームとして改修した事例. 九州の地域の素材をふんだんに使い,地域の拠点となるよう計画した.

4. 補助金や助成金の活用方法

古民家再生には、各自治体が提供する補助金や助成金を活用することができます。例えば、耐震補強やバリアフリー、省エネに関する補助金が利用できる場合があります。これらの制度を活用することで、費用を抑えることができます。


5. 古民家再生の魅力と可能性

古民家再生は、伝統的な建築様式を守りつつ、現代のライフスタイルに適応させることができる素晴らしい方法です。
環境に優しく、健康的な住環境を提供するだけでなく、地域の歴史や文化を守ることにもつながります。

当設計事務所では、地元の職人や建築業者と協力し、古民家の伝統的な技法を尊重しながら品質と安全性を確保します。
現状の調査や再生計画の立案、設計・施工のサポートなど、トータルでサポートいたしますので、ご興味のある方は、下記より問い合わせください。

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